移動平均線とは?見方と期間設定、遅れの大きさを計算する


 


チャートに表示される線のなかで、最もよく使われているのが移動平均線です。

多くの解説では、線の向きでトレンドが分かる、2本が交差したら売買のサイン、といった使い方が説明されます。そして最後に「ダマシがあるので注意」と書かれています。

ただ、なぜダマシが起きるのかまでは、あまり説明されません。

移動平均線には、避けられない性質があります。必ず遅れるという性質です。そしてその遅れは、期間から計算できます。

この記事では、その計算を扱います。

移動平均線とは

一定期間の終値を平均し、その値を線で結んだものです。

たとえば5日移動平均線なら、直近5日間の終値を合計して5で割ります。翌日になれば、最も古い日を外して新しい日を加え、また平均を出す。これを繰り返して線にします。

計算式はこうです。

移動平均 = 直近n期間の終値の合計 ÷ n

日足チャートなら1日ごと、1時間足なら1時間ごとに計算されます。「日」と書かれることが多いのですが、実際には表示している時間足の単位です。

何を示しているのか

平均値です。それ以上でも以下でもありません。

上向きなら、直近の平均が過去の平均より高い。下向きなら、その逆です。

チャート分析の解説では「未来の値動きを予測するためのもの」と説明されることがありますが、計算しているのは過去の値の平均です。移動平均線が示しているのは、過去の要約です。

この区別が、次に説明する「遅れ」につながります。


移動平均線は必ず遅れる

平均を取るということは、過去のデータを含めるということです。含めた分だけ、現在の価格から離れます。

どれくらい遅れるのか

計算できます。n期間の移動平均線は、おおよそ次の期間だけ遅れます。

遅れの目安 = (n − 1) ÷ 2

n期間分のデータを均等に扱うため、その真ん中の時点を代表していることになるからです。

期間ごとに計算すると、こうなります。

期間遅れの目安
52期間
104.5期間
2512期間
5024.5期間
7537期間
20099.5期間

日足で見た場合、200日移動平均線はおよそ100日分、つまり5か月近く遅れることになります。



具体的に何が起きるか

米ドル/円が160円で横ばいだったところから、上昇を始めたとします。

5日線は約2日で反応し始めます。25日線が上昇分を半分程度反映するまでには、約12日かかります。200日線がそうなるには、約100日必要です。

つまり、長期の移動平均線が上を向いたときには、価格はすでにかなり動いた後です。

これは欠点ではなく、そういう計算だからです。長い期間を平均すれば、それだけ過去の重みが増します。


ゴールデンクロスは、必ず事後に起きる

短期線が長期線を上抜けることをゴールデンクロス、下抜けることをデッドクロスと呼びます。

ここで、交差が何を意味しているかを整理します。

5日線が25日線を上抜けるには、直近5日の平均が直近25日の平均を上回る必要があります。これが起きるのは、価格が相応に上昇した後です。

交差した時点で、上昇はすでに始まっています。 クロスは上昇の開始を知らせるものではなく、上昇が一定期間続いたことを確認する信号です。

だからダマシが起きる

上昇が始まってからクロスまでに時間がかかるため、その間に価格が反転していれば、クロスした直後に下落することになります。これが「ダマシ」と呼ばれる状態です。

ダマシは移動平均線の不具合ではありません。遅れという性質から必然的に生じるものです。

期間を短くすればクロスは早く起きますが、その分だけ細かい値動きにも反応します。期間を長くすればダマシは減りますが、クロスはさらに遅れます。


期間設定に「正解」がない理由

期間の設定について、多くの解説では「多くのトレーダーが使っている期間を選ぶとよい」と書かれています。5、20、25、75、200といった数字が挙げられます。

多くの人が同じ線を見ていれば、その水準が意識されやすいという説明です。

ただし、これは根拠として循環しています。「みんなが使っているから機能する」「機能するからみんなが使う」という構造です。

計算の面から見ると、期間設定は次のトレードオフでしかありません。

期間を短くする期間を長くする
反応が早い反応が遅い
ダマシが増えるダマシが減る
細かい値動きを拾う大きな流れだけを示す

どちらが優れているということはありません。何期間の遅れを受け入れるかという選択です。

「最適な期間」を探すよりも、「自分が使っている期間は何期間遅れるのか」を把握しておくほうが、実際の判断には役立ちます。


SMAとEMAの違い

移動平均線には計算方法の異なる種類があります。代表的なのは次の2つです。

種類計算方法
SMA(単純移動平均線)期間内の終値を均等に平均する
EMA(指数平滑移動平均線)直近の終値により大きな比重を置いて平均する

一般に「移動平均線」と言えばSMAを指し、多くのチャートソフトで初期設定になっています。

EMAは直近の価格を重く扱うため、価格の変化に対する反応が速くなります。遅れを小さくしようとする工夫です。

ただし、反応が速いということは、細かい値動きにも反応するということです。ダマシが増える方向に働きます。ここでもトレードオフの関係は変わりません。


何を確認すればいいか

自分が使っている期間の遅れ

表示している移動平均線の期間から、(n−1)÷2 で計算できます。25日線なら約12日、75日線なら約37日です。

日足で75日線を見ているなら、その線は約1か月半前を中心とした平均を示しています。

時間足による違い

同じ「25」でも、日足なら25日、1時間足なら25時間です。遅れの大きさもそれに応じて変わります。

チャートの時間足を切り替えたとき、線の意味が変わっていることを意識しておく必要があります。

価格との距離

価格が移動平均線から大きく離れているとき、それは短期間で大きく動いたことを意味します。平均は必ず後ろから追いかけるためです。


よくある質問

移動平均線は何本表示すればいいですか

決まりはありません。2本にすれば交差が見えますが、それも遅れを含んだ信号です。本数を増やせば情報は増えますが、判断が難しくなる面もあります。

ゴールデンクロスが出たら買いですか

当サイトは売買の判断について推奨を行いません。ただし計算上、クロスは価格が一定期間動いた後に発生するものです。「これから上がる」ではなく「すでに上がっている」ことを示しています。

移動平均線だけで判断できますか

移動平均線は過去の終値の平均です。それ以外の情報は含まれていません。経済指標や金融政策といった材料は反映されないため、他の情報と併せて見る必要があります。

EMAのほうが優れていますか

反応が速い分、ダマシも増えます。どちらが優れているという関係ではありません。

期間は変えたほうがいいですか

期間を変えれば遅れの大きさが変わります。目的に応じて選ぶものであって、正解の数値があるわけではありません。


まとめ

  • 移動平均線は、一定期間の終値を平均して線にしたもの
  • 示しているのは過去の要約であって、未来の予測ではない
  • 平均を取る以上、必ず遅れる
  • 遅れの目安は (n−1) ÷ 2。25日線なら約12期間、200日線なら約100期間
  • ゴールデンクロスは価格が動いた後に発生する。上昇の開始ではなく、継続の確認
  • ダマシは不具合ではなく、遅れという性質から生じる
  • 期間設定は「反応の速さ」と「ダマシの少なさ」のトレードオフ

「どの期間が最適か」を探すより、「自分が見ている線は何期間遅れているのか」を把握しておくほうが確実です。その数字は計算で出せます。

用語全体はFXのしくみをたしかめるにまとめています。値動きの単位についてはpipsとは?で扱っています。


※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引手法や売買の判断を推奨するものではありません。テクニカル指標の使用によって利益が得られることを保証するものでもありません。FXには損失が生じるリスクがあります。取引の判断はご自身の責任において行ってください。

※遅れの目安として示した (n−1)÷2 は、期間内のデータを均等に扱う単純移動平均線における理論上の中心位置です。実際の値動きへの反応は相場の状況によって異なります。

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