米CPIの見方|前月比・前年比・コアの違いを数字で確かめる
経済ニュースで「米CPIは前年比3.4%」と流れ、
同じ日に別のニュースが「前月比0.1%」と伝える。
どちらも同じ発表の数字です。
片方は上昇が続いている印象を与え、
もう片方はほとんど動いていない印象を与えます。
この記事では、発表で同時に出る4つの数字が何を指しているのか、
なぜ前月比を足し上げても前年比にならないのか、
そして0.1%という差をどこまで確かなものとして扱えるのかを、
米労働統計局(BLS)が公表している数値で確かめます。
読み終えたあとは、発表を見たときに
自分がどの系列を見ているのかを判断できるようになります。
この記事の要点
- 前月比は季節調整済みの系列、前年比は季節調整前の系列で、別の数字を見ている
- BLSは1か月変化率の標準誤差を0.04%と公表している。前月比0.2%は、0.12%から0.28%の幅を持つ推定値である
- 季節調整前の指数は公表後に改定されない。改定されるのは季節調整済みの系列で、毎年2月に過去5年分が対象になる
米CPIは何を測っているか
CPIは消費者物価指数(Consumer Price Index)の略で、
米労働統計局が毎月公表しています。
都市部の消費者が購入する商品とサービスの価格が、
基準期からどれだけ変化したかを指数にしたものです。
価格は全米75の都市部で、
約6,000の住宅ユニットと約22,000の小売・サービス事業所から
毎月集められます。
報道で単にCPIと呼ばれるのは、
都市部の全消費者を対象とするCPI-Uという系列で、
これは米国人口の9割超をカバーします。
基準は1982年から1984年の平均を100とする形です。
2026年7月分の指数水準は333.918でした。
1982年から84年当時に100ドルで買えた同じ内容の買い物が、
いまは約334ドルかかるという意味になります。
出典は米労働統計局のCPI発表ページの2026年8月12日公表分です
(調査日2026年9月11日)。
発表はいつか
米CPIは対象月の翌月15日前後に、
米東部時間の午前8時30分に公表されます。
日本時間では夏時間で21時30分、冬時間で22時30分です。
日程は前もって公表されており、
前月の発表文の末尾に次回の日時が書かれています。
2026年8月分は9月11日の米東部時間8時30分、
日本時間で同日の21時30分に公表されます。
これは9月15日から16日に開かれる
米連邦公開市場委員会(FOMC)の前に出る、
最後の消費者物価の数字にあたります。
FOMCで何が決まるかは、
FOMCとは?日程・ドットプロット・為替への影響で整理しています。
経済指標や政策会合の見方をまとめた記事は、
相場をたしかめるから辿れます。
同時に出る4つの数字
発表を見ると、少なくとも次の4つが同時に並びます。
| 数字 | 内容 | 季節調整 |
|---|---|---|
| 総合の前月比 | すべての品目を含む1か月の変化率 | 季節調整済み |
| 総合の前年比 | すべての品目を含む12か月の変化率 | 季節調整前 |
| コアの前月比 | 食品とエネルギーを除いた1か月の変化率 | 季節調整済み |
| コアの前年比 | 食品とエネルギーを除いた12か月の変化率 | 季節調整前 |
コアが別に出るのは、食品とエネルギーの値動きが大きく、
月ごとの振れが全体の傾向を見えにくくするためです。
実際、2026年7月分では総合の前年比が3.4%だったのに対し、
コアは2.5%でした。
この差の大半はエネルギーです。
エネルギー指数は前年比14.7%、ガソリンは24.6%の上昇でした。
前月比を積み上げても前年比にならない
ここが数字の読み違いが起きやすいところです。
2026年1月から7月までの総合の前月比は、
順に0.2%、0.3%、0.9%、0.6%、0.5%、マイナス0.4%、0.1%でした。
これを掛け合わせると、7か月の累積は次のようになります。
1.002 × 1.003 × 1.009 × 1.006 × 1.005 × 0.996 × 1.001 = 1.0222
7か月で2.22%の上昇です。
同じペースが12か月続いたと仮定して年率に直すと約3.8%になります。
ところが7月分の前年比は3.4%でした。
0.4ポイントの差があります。
差が出る理由は2つあります。
1つは、前月比が季節調整済みの系列で、
前年比が季節調整前の系列だという点です。
同じ発表の中で、別の加工をした数字が並んでいます。
BLSは前者を短期の動きを見る用途、
後者を実際に支払う価格を見る用途として区別しています。
もう1つは、前年比が直近12か月の累積であるという点です。
新しい月が1つ加わるたびに、
1年前の同じ月が計算から外れます。
1年前の月の上昇率が大きければ、
今月の上昇率が高くても前年比は下がります。
前年比が下がったことは、物価が下がったことを意味しません。
同じ計算をコアで行うと、
1月から7月の累積は1.51%、年率換算で約2.6%となり、
前年比の2.5%とほぼ一致します。
食品とエネルギーを除くと、
季節調整の影響と入れ替えの影響が小さくなるためです。
0.1%の差をどこまで確かなものとして扱えるか
市場は前月比の小数第1位に反応します。
0.2%と0.3%では受け取り方が変わります。
一方で、BLSは発表文の中で、
この数字が標本にもとづく推定値であることと、
その誤差の大きさを明記しています。
総合CPIの1か月変化率の標準誤差は0.04%です。
BLS自身が挙げている例では、前月比が0.2%だった場合、
すべての小売価格を集計した場合の実際の変化率は
95%の確からしさで0.12%から0.28%の間に入るとされています。
つまり、公表された0.2%と0.3%の差は、
統計上は重なり合う範囲にあります。
市場が動くのは事実ですが、
その差が確定した事実であるとは限りません。
この幅を先ほどの図解では縦線で示しています。
3月の0.9%のような大きな数字と、1月の0.2%や7月の0.1%とでは、
誤差の幅が持つ意味が違うことが見て取れます。
なお、この標準誤差はBLSが総合CPIについて公表しているもので、
コアや個別品目については別に示されています。
改定の扱いは雇用統計と逆になっている
米雇用統計は、発表後に何度も改定されることで知られています。
米雇用統計とは?見方と数字が後から改定される仕組みで扱ったとおり、
翌月と翌々月に改定され、さらに年次改定があります。
CPIは違います。整理すると次のようになります。
| 系列 | 改定の有無 |
|---|---|
| CPI-U、CPI-Wの季節調整前の指数 | 公表時点で確定。改定されない |
| 季節調整済みの系列 | 毎年2月に、過去5年分が改定される |
| 連鎖型のC-CPI-U | 暫定値として公表され、四半期ごとに3回改定される |
2026年1月分の発表では、
2021年から2025年までの季節調整済み指数が
新しい季節調整係数で計算し直されました。
5年を超えた分は確定扱いで、以後は変更されません。
ここから言えるのは、前年比の数字は後から変わらないが、
前月比の数字は後から変わりうる、ということです。
過去の前月比を引用するときは、
それがいつ時点の公表値かを添えておくと、
後で自分の記録と食い違ったときに原因を追えます。
FRBが2%の目標に使っているのはCPIではない
もう1つ、混同しやすい点があります。
米連邦準備制度(FRB)が長期的な目標としている2%という数字は、
CPIではなく個人消費支出(PCE)価格指数にもとづくものです。
FOMCが年4回公表する経済見通し(SEP)に載る物価の数字もPCEです。
それでもCPIが注目されるのは、公表が早いためです。
CPIは対象月の翌月15日前後に出ますが、PCEは翌月末に出ます。
2週間ほど早く、方向感が似た数字が手に入ることになります。
CPIとPCEは対象範囲と品目の重みの作り方が異なるため、
数値は一致しません。
CPIの数字をそのまま2%の目標と比べると、
比較の対象がずれます。
政策金利の見通しが市場でどう見積もられているかは、
金利先物から逆算した確率として確認できます。
手順はFOMCの利上げ確率はどこで見られる?市場の織り込みを確認する方法に
まとめてあります。
自分で確かめる手順
- 米労働統計局のCPI発表ページを開く
- 冒頭のTable Aで、直近7か月の前月比と、右端の12か月の変化率を見る
- 総合とコアの行を分けて見る。エネルギーの行を見れば、両者の差がどこから来ているかが分かる
- 発表文の末尾にある次回の公表日時を控える
- 数字を記録するときは、季節調整済みか季節調整前か、いつ時点の公表値かを併記する
発表直後は価格の動きが速くなります。
この時間帯の注文の通り方については、
米雇用統計の記事で触れた内容がそのまま当てはまります。
陥りやすいミス
前年比の低下を物価の下落と読むこと。
前年比は12か月の累積で、
1年前の月が外れることでも下がります。
水準が下がったかどうかは、指数そのものを見る必要があります。
前月比の小数第1位を確定値として扱うこと。
BLSが公表している誤差の幅は、
0.1%程度の差を包み込みます。
過去の前月比を、公表時点を書かずに記録すること。
季節調整済みの系列は毎年2月に過去5年分が改定されるため、
後から数字が合わなくなります。
おさらい
- 米CPIは翌月15日前後、日本時間21時30分(冬時間は22時30分)に公表される
- 前月比は季節調整済み、前年比は季節調整前。同じ発表の中の別の系列である
- 前月比を12か月分積み上げても前年比とは一致しない。季節調整の違いと、1年前の月が外れることが理由
- 1か月変化率の標準誤差は0.04%。前月比0.2%は0.12%から0.28%の幅を持つ
- 季節調整前の指数は改定されない。季節調整済みの系列は毎年2月に過去5年分が改定される
- FRBの2%の目標はPCEにもとづくもので、CPIとは別の指標である
次に読む記事として、改定という論点をもう一段掘るなら
米雇用統計とは?見方と数字が後から改定される仕組み。
政策金利の見通しの確かめ方なら
FOMCの利上げ確率はどこで見られる?市場の織り込みを確認する方法が続きになります。
本記事は情報提供を目的としたもので、
特定の取引を推奨するものではありません。
数値は2026年9月11日時点で
米労働統計局の公表資料により確認したものです。
最新の数値は公式の発表をご確認ください。
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